どうしようもなくエクリチュール

つれなき毎日を過ごしつつ、世につれ、徒然に綴ります。

バースデー・ワンダーランド

原恵一監督、松岡茉優が主演声優を務めるアニメーション映画「バースデー・ワンダーランド」が、あんま話題になってないっぽくて、ちょっぴり残念…

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

かの名作「クレしん・オトナ帝国の逆襲」を最も泣ける映画に挙げがちな私にとって、原監督はやはり信頼できるクリエイターであって、それなりのハードルで臨んだ訳なんですがね。

 

結果的にはざっくり言うと、そない好みではなかった…というか、思てた以上にメロメロのファンタジー路線で、つい寓意とかを探ろうとするあまり、物語世界に没入できなかったという、自業自得な鑑賞となりました。

 

これは古くは「不思議の国のアリス」の如く、ロジック云々を超えてどんどん飛翔しながら楽しむタイプの作品なんだろうし、アニメーションとして官能性をこそ味わうべきだったなあ、と。

 

ロシア人イラストレーター、イリヤ・クブシノブさんによるヴィジュアルイメージはフレッシュかつトラディショナルな趣もあって、絵本のような質感を伝えております。

 

声優陣は手練れ揃いゆえみんな手堅い仕事ぶりですが、特に印象的なのは唯一の当て書きだったという、好奇心旺盛な主人公の叔母・ちぃちゃん役の杏さんかなぁ。

 

大枠は王道の冒険成長譚で、ちょっとした勇気を持つことの大切さを啓蒙する、至極ストレートなメッセージが落とし込まれてはいるんですが、クライマックスでのえも言われぬ開放感、これはやはり原恵一節と呼ぶにふさわしい独自性を存分にアピールしております。

 

必要以上に「オトナも泣ける」という要素に拘泥せず、主人公・アカネと同年代のローティーンにこそ観て欲しい、日本が誇るアニメ映画ですな。