どうしようもなくエクリチュール

つれなき毎日を過ごしつつ、世につれ、徒然に綴ります。

ザ・フォーリナー/復讐者

ジャッキーマニアの間でも評判の高い、ジャッキー主演最新作「ザ・フォーリナー/復讐者」を観てきました。

 

the-foreigner.jp

 

クンフー時代のジャッキー映画をしょっちゅうTVでやってたのが小学生時代という、ジャッキー直撃世代なもんで、最低限の知識はあれど、代表作をうろ覚え程度にしか観てない「弱者」なので、例によって大したことは言えないのですがね。

 

老年に差し掛かったジャッキーが、年齢相応のシリアスな演技を見せつつ、しっかり「ジャッキー印」のアクションも披露してくれる…これだけでファン満足度は担保されているんじゃないでしょうか。

 

ただ一方で、おそらく脚本の問題だと思うんですが、主演作の割に存外出しろは少なくって、むしろ敵役のピアース・ブロスナンを巡るドラマがストーリー全体の推進力になってる感もあったりして。

 

あと「アトロク」の「ムービー・ウォッチメン」における宇多丸評で知ったんですが、インターナショナル版ではピアース・ブロスナン率いる組織が実在のIRAになってるのが、日本と中国のヴァージョンだけ架空のUDIなる名称に変更になってる(ま、描き方は明らかにIRAなんでIRAだと思って観てましたが)のが、結構全体の印象に影響与えちゃってるかも。

 

というのもね、そこのフィクション度が上がってるせいで、本来政治や宗教が複雑に絡む設定・テーマ・登場人物のキャラ造形が、割とありがちなギャングやマフィアの抗争もの系に見えちゃってる気がしましてね。

 

特にジャッキー演じるクワンさんは、中国の少数民族出身でベトナム戦争アメリカの特殊工作員として活動〜ロンドンの中華料理店主という、相当濃密な背景があるんですが、そのへん結構あっさり処理されちゃうんで、ちょっと食い足りないかな、と。

 

特殊工作員としての戦いっぷりも、後半の森でのくだりとか、モロにランボーだったりするし。

 

正直、話に聞く限りマーティン・キャンベル監督作のクライム・サスペンスとしては、インターナショナル版の方がクオリティは高そうだが、ジャッキーサービスが割増されてる分、ある種の異物感がある日本・中国版の独特の味も捨てがたいとも思います。

 

そしてジャッキー映画としてのとどめとも言うべき、エンドロールで流れる本人が歌う主題歌「Ordinary People」、これがもう個人的にツボなドラマティック・アジア歌謡なので、結局これだけで点数爆上げなのであった。マジ、名曲!!!

 


The Foreigner 2017 Official Chinese Song - Ordinary People(Eng Subs) Jackie Chan and Liu Tao

 

 

シャザム!

マーベルが誇る「アベンジャーズ/エンドゲーム」もいいですが、一方の雄、DCの最新作「シャザム!」ももっと注目されてしかるべきなんじゃないですかね。

 

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「アクアマン」もそうでしたが、ここ最近のDCEUは、ようやくアメコミ本来の陽性のエンタメテイストを前面に押し出すようになってきて、いい感じ。

 

とりわけこの「シャザム!」は、マーベルも含む近年のアメコミ映画の中でもずば抜けて(いい意味で)お子様向けムービーとして作られていて、その振り切りっぷりが実に痛快なんですな。

 

その方針がとにかく徹底されているので、PG指定を意識したかもしれないゴア描写のオミットも、「ヴェノム」の場合とは違って特に違和感なく受け入れられるという。

 

そしてここがミソなんですが「お子様向け」だからと言って、大人から見て決してぬるい出来なのでは決してなくって、むしろストーリーや演出上のロジックはかなり周到にきっちり押さえられている…それ故に安心して観られるウェルメイドな作りになっているのですねー。

 

主人公、ビリーをはじめとして恵まれない環境の子どもたちを巡る、心温まる展開は、古き良きハリウッド映画の趣すらあって、全体的にどこかノスタルジック。

 

多様化を極めたアメコミヒーロー映画界において、一服の清涼剤のような爽やかな感動が際立つ、超良質なファミリー映画です。

 

あと関係ないけど、鑑賞時、近くにアメリカ人とおぼしき家族連れの一団がおり、ひと際リアクションよく大笑いしていて、ほっこりしながらも「そこ、笑うとこなの?」とちょい戸惑う部分も結構あった。やっぱそのへんは感覚違うんかねー。

バースデー・ワンダーランド

原恵一監督、松岡茉優が主演声優を務めるアニメーション映画「バースデー・ワンダーランド」が、あんま話題になってないっぽくて、ちょっぴり残念…

 

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かの名作「クレしん・オトナ帝国の逆襲」を最も泣ける映画に挙げがちな私にとって、原監督はやはり信頼できるクリエイターであって、それなりのハードルで臨んだ訳なんですがね。

 

結果的にはざっくり言うと、そない好みではなかった…というか、思てた以上にメロメロのファンタジー路線で、つい寓意とかを探ろうとするあまり、物語世界に没入できなかったという、自業自得な鑑賞となりました。

 

これは古くは「不思議の国のアリス」の如く、ロジック云々を超えてどんどん飛翔しながら楽しむタイプの作品なんだろうし、アニメーションとして官能性をこそ味わうべきだったなあ、と。

 

ロシア人イラストレーター、イリヤ・クブシノブさんによるヴィジュアルイメージはフレッシュかつトラディショナルな趣もあって、絵本のような質感を伝えております。

 

声優陣は手練れ揃いゆえみんな手堅い仕事ぶりですが、特に印象的なのは唯一の当て書きだったという、好奇心旺盛な主人公の叔母・ちぃちゃん役の杏さんかなぁ。

 

大枠は王道の冒険成長譚で、ちょっとした勇気を持つことの大切さを啓蒙する、至極ストレートなメッセージが落とし込まれてはいるんですが、クライマックスでのえも言われぬ開放感、これはやはり原恵一節と呼ぶにふさわしい独自性を存分にアピールしております。

 

必要以上に「オトナも泣ける」という要素に拘泥せず、主人公・アカネと同年代のローティーンにこそ観て欲しい、日本が誇るアニメ映画ですな。

アベンジャーズ/エンドゲーム

想像以上にヒットしてますねー、「アベンジャーズ/エンドゲーム」。

 

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アバター」の興行収益世界記録を塗り替える勢いという世界的なメガヒットぶりもさることながら、ここ日本でのこれまで以上のヒットぶりは、ちょっと想定外なレベルじゃないっすか?

 

まあとりあえずの「完結編」ということで、注目度が上がるのは必定なんですが、逆に言えばある程度過去作踏まえてないと、そもそも理解不能というハードルはある訳で。

 

私はと言えば、結構後追いながらも一応MCU21作は予習済という「そこそこリテラシー」な立場で、公開翌週鑑賞という、割にフラットなノリではあったんですがね。

 

とりあえず現時点では知り合いにすらノー告知の当ブログゆえ、この期に及んではネタバレ云々気にせず書いていきますが、とりあえず3時間超という長尺にも関わらずまったく長く感じない…どころかまだまだいけまっせな体感だった時点で、エンタメとして超優秀っすよね。

 

元々6時間ぐらいあったのを半分にギュッと圧縮したというだけあって、多少の筋の簡略化とご都合主義的展開はありつつ、一切のダレ場なし!!

 

とりあえず全員集合にリセット&これまでの総まとめをやる意味で、タイムリープは最も合理的な手段だろうし、諸々クリアするべきチェックポイントはぬかりなく通過。

 

まあでも全体的にやっぱ初期メン重視のバランスにはなっていて、アイアンマン、ハルク、ソー、キャップにホークアイ、ブラック・ウィドウあたりが美味しいとこ持ってく作りにはなってますわな。

 

特にトニー(アイアンマン)、スティーヴ(キャプテン・アメリカ)、マイティ・ソー

の3人絡みのエピソードが軸になっていて、誰のストーリーに一番グッとくるかは、人それぞれだとは思うんですが、個人的には今回はトニー・スタークが刺さりましたねー。

 

これまでそのエゴイストぶりで散々振り回してきたトニー社長が、自らのささやかな幸せをなげうって、遂にヒーローとしてあるべき自己犠牲に目覚める!

さらに過去の世界における父・ハワードとの邂逅と和解、この王道展開にはこれまでの溜めが効きまくってる分、胸アツMAXでございました。

 

勿論、キャップの人生やり直しやソーのセカンドキャリアも着地としては文句なしの美しさで、カーテンコールのようなエンドクレジットの多幸感は、唯一無比。

 

アントマンが戻れたの、たまたまやん」とか「タイムマシンできんの早っ!」とか「真田広之の出番短すぎだし、ホークアイの日本語、全然聞き取れん」とか「ソウルストーンの犠牲の基準、ようわからん」とかツッコミどころも満載ながら、そういうのをあーだこーだ言い合うのも楽しみの一つという、シンプルに娯楽としてコスパ抜群の、映画界きっての満漢全席。きっちり堪能させていただきやした。

主戦場

局地的にヒットしているドキュメンタリー映画「主戦場」ですが、やっぱメジャーなメディアでは黙殺気味なんですかね。

 

www.shusenjo.jp

 

まあ従軍慰安婦がテーマってだけで、話題にすることすら腰引ける人も多いんでしょうなあ、残念ながら。

 

かく言う私もその問題に関して全然無知なもんで、知的欲求込みで観に行ったんですがね。

 

一方でいわゆる左翼文脈での教条的なノリは人並みに苦手なので、その点、日系アメリカ人留学生がネトウヨに絡まれたことをきっかけに、この問題についての識者からトンデモ論客まで突撃取材するというこの映画のスタイルは、すごく鑑賞しやすいバランスだったと思います。

 

まあ杉田水脈櫻井よしこケント・ギルバートをはじめとするそっち系の言説は、明らかに「フリ」に使われるケースが圧倒的に多くって、そこに絶妙なタイミングで反証がツッコミとして入り、笑いを喚起する…この構造が劇場映画としての最大のアピールポイントになってはいます。

 

ただこういった歴史修正主義者のトンデモっぷりと同等、もしくはそれ以上に印象に残るのは、結局当時あったことに関する明確な証拠が実際にはなく、数少ない根拠となるデータもほぼアメリカにしか残っていないということ。

 

最近のものとしては「ペンタゴン・ペーパーズ」など多くの映画でも描かれる通り、かの国にはやはり起きたことについての文書がきっちり残っているのに、我が国には確信犯的にそれが残されていない…これはもう現政権周りで頻発している現在進行形の問題じゃないですか。

 

そういった体質が戦時中から連綿と続いていることに暗澹たる気分にさせられ、大いなる示唆と警告を感じずにはいられませんでしたわ。

 

そしてこの問題が90年代まで顕在化しなかった要因の一つとして、韓国国内の当事者に対する偏見・非難があったことも不勉強ながら初めて知り、こちらも多くの示唆を含んでいるように思います。

 

さらにこの映画が決してテレビなどで大きく扱われないというメタ的な状況までも取り込んで、その内容のみならず存在自体がマスコミからSNSまでマクロに横断したメディア論になっている、そこもリアルタイムでこそ観る意味を突きつけてきます。

 

クライマックスと言っていい戦慄のボスキャラ登場のくだりには、サスペンスと困惑と失笑が複雑に交錯し、なんとも形容しがたい感情を惹起される…物事を重層的に捉えるのが苦にならない向きは必見の1作なんじゃないでしょうか。

松岡茉優トーク無双

珍しく「アトロク」ことTBSラジオ「アフター6ジャンクション」の20時台を、松岡茉優ゲスト目当てで聴きましたが、予想以上の無双っぷりでしたねー。

 

彼女のことを認識したのは、映画「桐島、部活やめるってよ」きっかけという、まあベタっちゅうかなんちゅうかなタイミングで、その他観てる出演作も「あまちゃん」だ「ちはやふる」だ「勝手にふるえてろ」だ「万引き家族」だと、一般的にヒットしたもんばっかなので、別に熱心なファンってことでもないんですがね。

 

でも数少ない観てる作品での演技は総じて素晴らしく、特に初の主演映画「勝手にふるえてろ」は、彼女なくしてあり得ない傑作だと思ってます。

 

あとTVのバラエティ番組でのトークスキルも印象に残っていて、残念ながらラジオは文化放送のもJ-WAVEのも聴いたことなかったものの、さぞかし達者に喋ってたんだろうと思ってはいたんですが…今日のアトロクにおけるマシンガントークは、ちょっと他の追随を許さないレベルでした。

 

猛烈なスピードで凄まじい数の言葉を畳み掛けているのに、完璧に聞き取れる、かつフレーズも一々的確で、情報量も多くきっちりエモーションも入っている。

 

質問に対する受け答え、パンチラインを入れる頻度とタイミング、果ては時間までも気にしていたとは、スキル的に恐ろしいぐらい高いでしょうよ。

 

まあTwitterのタイムラインでも散見できたように、はっきり言って好き嫌いは分かれるんだろうけど、個人的には「滑舌、発声など基本的なトークスキル」と「掛け合いの妙」、そして「情報性」と「オリジナルな私見」などがラジオを聴く際に求めるものなのだが、それ全部入りだったんでめっちゃ満足度高かったっす。まあ濃すぎて、尺的にこれ以上だとトゥ・マッチになる気もするけど。

 

にしても、面白くないトークを延々聴かされるのって、ホント苦痛よね…

上野千鶴子祝辞

上野千鶴子先生については全然詳しくないんだけれども、まあ「フェミニズムの親玉」ぐらいの浅い認識は持っていて、今回話題の東大入学式の祝辞も「通常運転」だなあって感想なんだが、思いのほか反響大きいようで。

 

www.u-tokyo.ac.jp

 

まあ概ねぐうの音出ない正論ですわね。

 

面白かったのは普段彼女の発言などを取り上げないTVショーの反応で、と言ってもそんなに数、見ちゃいないんですが、たまたま見た日曜夜の宮根誠司MCの「Mr.サンデー」で元フジテレビの局アナ、菊間千乃が絶賛&木村太郎が苦虫噛み潰したような

顔で苦言、宮根はヘラヘラってのが、何か世間のリアクションの縮図みたいで笑っちゃいました。

 

あと大体朝はチャンネル合わせちゃうテレ朝「モーニングショー」が、東大OBの山口真由を含め、割と祝辞の内容に否定的だったのが、意外っちゃ意外で興味深かったですな。マッチョで父権主義的な属性の方々や保守的な高齢者が強く反発するのは自明ながら、存外リベラル系でも抵抗感ある人、いるんだなー、と。

 

かく言う私も、どっちか言うとリベラル、一方でこじらせ系ミソジニーを抱えつつも、前時代的セクハラの横行には抵抗感じてる方だとは思うんですが…上野先生のエクストリームな言説には「そこまで言われると、ちょっとついていけんわー」と思っちゃったりしてね。

 

例の祝辞もデータに裏打ちされた「機会の不平等性」「日本社会の後進性」みたいな部分は、完全に乗れるんですけど、合コン云々とかの箇所は、まあ実際問題、今もそういったことがあるはあるんでしょうけど、なーんか引っかかっちゃうというか、バイアスの強さに「退いちゃう」訳で。

 

まあフェミニズムに関して強い定見も専門知識もないんで、識者にガンガン詰められたらキャンつって降参するとは思うけど、「最高!」と「けしからん!」の狭間で、モヤモヤといろいろ考えてしまうのであった。どっちにしろ一番共感できんのは、この手の話にまったく関心ない連中だけどね。

 

あと完全に乗れる訳でもないけど、筒井康隆信者なんで、このへんの記述には結局ほっこり(という表現が適当かわかんが)してしまうのであった。

 

shokenro.jp