どうしようもなくエクリチュール

つれなき毎日を過ごしつつ、世につれ、徒然に綴ります。

MOORE BLUES FOR GARY

ゲイリー信者として当然気にはかかっていたのですが、RAINBOWの再結成云々の件と言い、なーんか微妙に「ヒトのふんどしで」感が漂うボブ・デイズリー案件(ベーシストとしては相当好きなのですが)ということもあり、これまでスルーしてきた昨秋リリースのゲイリー・ムーア・トリビュート盤「MOORE BLUES FOR GARY」、ようやっっと耳を通しましたとさ。

 

wardrecords.com

 

レコーディング・メンバーのコアは、ボブが地元・オーストラリアで組んでいるブルーズ・バンド、THE HOOCHIE COOCHIE MANの面々。

 

そこに加えてボブが過去に共演した人を中心とする「お友達」が各曲に参加しております。

 

ゲイリーのバンドも含め、華麗なるバンド、セッション遍歴を誇るボブさんだけに、かなり豪華なラインナップが並んでいて、そこのフックは申し分ないんですが、選曲がどうにもねぇ…というのが、これまで食指が伸びなかった理由の一つだったり。

ブルーズ曲に特化するのは、一応いいとしても、もうちょい何とかならんかったのか…

 

そのへん含め、各曲ごとに軽くコメントしていきますかね。

 

①That's Why I Play The Blues

2004年の再々ブルーズ回帰作「POWER OF THE BLUES」から。

いきなりこんな知名度低い地味な曲で始めんでも…

 

この曲に限らず、ボブのベースは当然のように目立ち気味のプレイ&ミックス。

THE HOOCHIE COOCHIE MANの方々は、まあ可もなく不可もなくな感じだが、ドラムは終始味も素っ気もなくって、かなり物足りない。

 

この曲でVoをとってるのは、ボブが70年代に在籍していたブリティッシュ・ロック・バンド、WIDOWMAKERのジョン・C・バトラー。

往時のスタイルは不勉強ながらよく知らんが、ここにおいては結構ゲイリーに近いスタイルで違和感なく歌っている。

 

②The Blues Just Got Sadder

ここで何故だかゲイリーと関係ない、ボブが渡英前にいたとかいうバンド、Kahvas Jute のナンバーが登場。曲の善し悪し以前に、ゲイリーのトリビュート・アルバムにそんなん要るか?

 

ゲストはVoがジョー・リン・ターナー、ギターがスティーヴ・ルカサー

 

ルカサーがさすがの手練れぶりをさりげなく示してくれるが、いかんせん曲自体の印象度が低いので、インパクトはそれなり。

 

③Empty Rooms

84年リリースの「Virgin」移籍第二弾「VICTIMS OF THE FUTURE」初出の人気バラード。

これはブルーズじゃないものの、ゲイリーファンには嬉しいセレクト。ベースソロがあるから、選ばれたのかな?

 

イントロをはじめとするブルーズ風アレンジは特に奏功してはいないが、オリジナルの共作者でもあるニール・カーターがVo&Keyで参加しているのは、それだけでもう「あざーっす!」って感じ。

 

④Stiil Got The Blues

90年リリースのゲイリー最大ヒット作「STILL GOT THE BLUES」から。

 

選曲的にもメンツ的にもおそらく本作最強のアピールポイント。

 

オリジナルに準じた盟友・ドン・エイリーの参加もさることながら、久々のシーン復帰となるジョン・サイクスが、リスペクトと自己主張を封じ込めた長いソロを、現役感バリバリで披露しているだけで「買い!」となるオールドファンも少なくない筈。

 

THUNDERのダニー・ボウズのVoは時に「クセが強いんじゃ」とツッコミたくならなくもないものの、当然テクニック的にはバカうまだし、許容範囲か、と。

それだけにここでもドラムの弱さが残念…

 

⑤Texas Strut

「STILL GOT THE BLUES」収録のブギー・ナンバー。

VoになんとゲイリーのSKID ROW時代の僚友、ブラッシュ・シールズが客演。

 

ワイルドかつ渋い声で健在ぶりを示していて、嬉しくなる。

 

⑥Nothins's The Same

92年の「AFTER HOURS」のエンディングを飾るアコースティック・バラード。

 

Voを務めるのはグレン・ヒューズ

ゲイリーお得意の切なく美しく情熱的なメロディを、グレンのソウルフルでクリアなハイトーン・ヴォイスが見事に織り上げていて、相性バッチリ。楽曲本来の魅力を際立たせる好テイクに仕上がっている。

 

⑦The Loner

87年の人気作「WILD FRONTIER」収録のインスト・チューン。

 

このアルバムのツアーメンバーだったエリック・シンガーがドラムを担当。

Keyのドン・エイリー同様、そつなく脇を固めているが、肝心要のGパート…ダグ・アルドリッチが弾いているこれが、微妙にツボ外していてもどかしい。

 

ダグちんはそんなにゲイリーに思い入れないんちゃうかなあ?

 

⑧Torn Inside

2004年の「POWER OF THE BLUES」から。

 

ボブも在籍経験のある名門ブリティッシュ・ブルーズ・バンド、CHICKEN SHACKのスタン・ウェッブがVo&Gで参加。

 

笑っちゃうぐらい音数の極端に少ない激渋プレイが、滋味を湛えつつさすがの存在感を放っていて、個人的には彼に本作におけるMVP賞を差し上げたい。

 

2000年代以降、ゲイリーのバンドにちょくちょく参加していたダリン・ムーニーのドラムもいい感じで、なんなら全編彼で良かったんじゃないの?

 

⑨Don't Believe A Word

78年の1stソロ「BACK ON THE STREETS」でカバーしたTHIN LIZZYのナンバー。

 

テンポはゲイリーによるスロー・ヴァージョン、リフを前面に出したバッキングはLIZZY風という折衷的なアレンジになっているが、あんま成功してるとは言えない。

 

BLACK STAR RIDERのデーモン・ジョンソンがVo&Gを担当。まあ彼が演るんだったら、LIZZYベースのテイストで良かったんじゃないか、と。

 

⑩STORY OF THE BLUES

92年の「AFTER HOURS」収録。

 

①と同じジョン・C・バトラー&THE HOOCHIE COOCHIE MANによるプレイ。

 

THE HOOCHIE COOCHIE MANのGの人はオーソドックスなブルーズ・スタイルなんで、特に問題はないけど、淡白すぎて印象は薄い。

 

⑪This One's For You

ここでまたKahvas Juteのレパートリーが登場。何でだよ!

 

Voがゲイリーの長男・ジャック、Gが次男・ガスというのは、ファンにとっては感慨深い…だけに何でゲイリーの曲を演らせないのか、理解不能

 

ジャックのVoはそこそこ親父似。ガスのGはトーンのニュアンスに微かにテイストを嗅ぎ取れなくもないものの、割とシンプルな同じフレーズを連ねがちで、比べるのは酷な感じ…

 

⑫Power Of The Blues

またまた2004年の「POWER OF THE BLUES」から。このアルバムから3曲も入れる意味、あるか?

 

Voがジョーリン、Gがジェフ・ワトソンという、「ドラム以外MOTHERS ARMY」なメンツによるテイク。

 

ジェフのGはきっちり原曲のスタイルに寄り添いつつアタックは強めながら、ドラムがダリン・ムーニーなので当たり負けしていない。

 

⑬Parisienne Walkways

78年の1stソロ「BACK ON THE STREETS」から、お馴染み「パリ散」。

 

VoはBLACK STAR RIDERのリッキー・ウォリック。THIN LIZZYとしてのツアー経験で身につけたフィル・ライノット風の歌い回しはさすがの安定感。

 

Gはパープルのスティーヴ・モーズで、さすがの器用さで纏め上げてはいるが、数あるゲイリー・ヴァージョンの持つ「情念」は、顕現し得ていない。